2001年9月11日、ニューヨークのワールドトレードセンターに二機目の旅客機が激突する瞬間が、世界中に中継されました。 あたかも「ハリウッド映画」を見ているような錯覚にとらわれた人も少なくないと思います。高精度とされるミサイルに取り付けられたカメラからも、標的をとらえる瞬間が映し出され、その色のない映像は“テレビゲーム”の画面のようでもありました。
映像メディアが高度化し、日常的なものになればなるほど、展開される映像は、フィクショナルなものになってゆきます。そして、その映像に文字解説や、ナレーションがつけられ、見やすく、判りやすく、コンパクトになればなるほど、その出来事のリアリティーが消されてゆきます。こういう状況の中で、「戦争を知る」とはどういうことなのでしょうか?
国際情勢を知ることも当然重要だと思います。しかし、それだけでは足りないのではないでしょうか。それは、戦火の中で傷ついているのは生身の人間だからです。戦火の中で、人々がどのように暮らし、どう傷つき、どのように泣き、怒り、その中からどう自らを取り戻そうとしているのか・・・。その現実を知り、その痛みを想像する、人としての「イマジネーション」、他人のことを静かに想像する力が、戦争を本当に知るためには必要なのではないでしょうか?そして、そのためには、人々の声を聞き、痛みを共感し、想いを預かり、そして伝えることが大切ではないかと思っています。
20世紀は戦争の世紀と言われ、多くの兵士が死傷し、多くの一般人、子供たちが命を失いました。そして、21世紀も戦争の世紀になってしまう危機が私たちを取り巻いています。戦争が終わるたびに、二度と戦争を起こしてはならないと決意するにもかかわらず、どうして、人はまた戦争を起こしてしまうのでしょうか?戦争の中で、突然失われてしまう命は、何の代償なのでしょうか?戦火の中で人々に何が起こっているか、「しっかりとじっくりと見つめ」そして「考える」ことを全ての出発点にしたいと思っています。
ここにひとつのドキュメンタリー映画があります。「ニュース」を舞台に海外からリポートを送ってきたビデオジャーナリスト・綿井健陽が、イラクで撮りためた123時間の映像を102分の作品としてまとめたものです。この映画「Little
Birds −イラク 戦火の家族たち−」を見ることから、うつろになった平和に身をひそめてしまわずに、戦争の現実をしっかりと受け止めてほしいと思っています。
ひとりでも多くの人々がこの映画に出会うことが出来るようにあなたの力を貸してください。
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